茂 美 :さっきの裁判,1回の審理で判決まで言い渡したわね。

      審理の時間も20分くらいですごく短く感じたのだけど。


 弾  :さっき傍聴したのは,即決裁判手続きだよ。
     刑事裁判では,まず,冒頭手続きといって,裁判官が被告人本人に間違いないかどうかを名

     前・生年月日・住所・本籍地・職業を聞くことによって確かめる人定質問(じんていしつもん),

     検察官による起訴状朗読,裁判官から被告人への黙秘権などの権利告知,起訴状記載の

     犯罪事実(公訴事実)に間違いがないかどうかを被告人・弁護人から確認する罪状認否(ざ

     いじょうにんぴ)を行うことになっているんだ。
     その後,証拠調べ手続きに入るんだけど,そこでは,検察官が証拠によって立証しようとして

     いる事実を述べ(冒頭陳述),相手方が裁判官に見せてもよいという意見を述べた(取り調べ

     に同意した)証拠書類(書証)を提出し,テレビの法廷ドラマなんかでやっているように,被害

     者や被告人の情状証人に話を聞く証人尋問,被告人本人から話を聞く被告人質問が行われ

     るんだ。
     そして,証拠調べが終わると,検察官が被告人に科す刑罰はこのぐらいが相当だ等の意見

     を述べ(論告・求刑),それに対して弁護人が無罪だとか有罪だけど寛大な処罰を望む等と

     述べた(弁論)後,被告人が最後に裁判官に意見を言う機会が与えられ,審理が終了する

     (結審)ことになるんだ。
     公訴事実を間違いないと認めて争わない事件だと,1回(大体40分くらい)で冒頭手続きか

     ら結審まで行くことが多いんだ。2~3週間ぐらい後に次の期日が決められ,その期日に判決

     が言い渡されることになるよ。
     即決裁判手続きは,軽微な窃盗や薬物事犯,不法入国などの一定の犯罪の場合に,公訴

     事実を間違いないと認めていることを条件として,証拠調べ手続きを簡略化して即日で判決

     を言い渡すんだ。懲役刑を科す場合には,執行猶予を付けることになっているよ。


茂 美 :執行猶予が付くからといって,安易に簡略化した手続きで有罪判決をすることには問題があ

     りそうな気もするのだけれど・・・。


 弾  :多数の犯罪を裁判にかけて処罰していくには,ある程度の効率化が必要だってことさ。


茂 美 :ところで,冷蔵庫に入れてあった私のプリンを食べたの,弾くんでしょ!


 弾  :ごめん。やっぱりバレちゃったか・・・。


茂 美 :いくらやったことを認めても,かわりに奢ってもらう料理は安くならないんだからね♪


 弾  :トホホ・・・。



(弁護士 横尾 和也)