安西です。

すったもんだの末に,結局は朝鮮学校も認められそうだと思っていたら,
4月は見送りになってしまいました・・・

国家間にはいろいろな思惑があるでしょう。
しかし,それを日本に住んでいる子どもたちに背負わせるべきではないと思います。
国としてそれくらいの器量は見せてほしいです。

子どもの問題に関わる多くの弁護士たちの間では,
このことは大きな問題としてとらえられています。
有志の弁護士たちで総理大臣宛に意見書を出しました。
私もその一人に名前を連ねています。
この意見は間違っていないと思っています。
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 私たちは在日外国人の人権問題にかかわっている弁護士で,現在,朝鮮学校の保護者より「高校無償化」制度の問題などで相談を受けています。
 本年1月 29日,「高校無償化」法案が本年4月からの実施に向け,今国会に上程することが閣議決定されました。「高校無償化」制度の対象としては新政権発足当初よ り各種学校である外国人学校についてもその範囲に含むことが念頭におかれ,昨秋,文部科学省が財務省に提出した概算要求でも朝鮮学校等の外国人学校を含め て試算されていました。
 しかしながら,新聞各紙では,「中井拉致問題担当相が,4月から実施予定の高校無償化に関し,在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮 学校を対象から外すよう川端達夫文部科学相に要請,川端氏ら文科省の政務三役が検討に入った。(2月21日)」「鳩山首相は25日,高校無償化で,中井洽 拉問題致担当相が朝鮮学校を対象から外すよう求めていることについて『ひとつの案だ。そういう方向性になりそうだと聞いている』と述べ,除外する方向で最 終調整していることを明らかにした。(2月26日)」と報道されています。
 私たちは,1998年2月及び2008年3月の日本弁護士連合会の勧告書の指摘しているとおり,子どもの権利条約,人種差別撤廃条約及び国際人権規約などの国際条約はもとより,憲法第26条1項(教育を受ける権利)および憲 法第14条1項(平等権)の各規定の解釈から,朝鮮学校に通う外国籍の子どもにも学習権(普通教育を受ける権利及びマイノリティ教育を受ける権利)が保障 されており,朝鮮学校に対し,日本の私立学校あるいは他の外国人学校と比べて差別的な取扱いを行うことは,朝鮮学校に通う子ども達に対する重大な人権侵害にあたるものと考えます。
 日本のほぼすべての大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格を認めており,実際に,東大や京大をはじめとする多くの国公立 や有名私立大学に現役で進学している事実や,今年度の全国高校ラグビー選手権大会で大阪朝鮮高級学校が全国3位の快挙を成し遂げたことなどからも,朝鮮高 級学校(高等学校相当課程)は,学校教育法第1条が定める日本の高等学校(以下「1条校」という)と比べても遜色ない教育課程を有していることは明らかで あり,朝鮮学校をはじめとする外国人学校を差別なく,当然「高校無償化」制度の対象に含むべきです。
そもそも,「高校無償化」制度の趣旨は,家庭 の状況にかかわらず,全ての意志のある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会を築くこと,そのために家庭の教育費負担を軽減し,子どもの教育の機会均等 を確保するところにあります。事務処理上の便宜上,学校設置者が代理人として就学支援金を受領する間接給付方式をとるものの,就学支援金の直接の利益享受 主体は,授業料が軽減される子どもとその家庭です。
 かかる制度趣旨からすると,1条校と区別することは勿論,各種学校である他の外国人学校とも区別して,朝鮮学校を「高校無償化」制度の対象から除外する取り扱いには,多くの法的問題点があると言わざるを得ません。
国連人種差別撤廃委員会が 9年ぶりに行っている対日審査会合でも25日,「鳩山政権の高校無償化法案で朝鮮学校の除外が検討されていることについて,委員から,人権保護などの点か ら問題があるのではないか,などと懸念する意見が出た。」(2月26日)と報道されています。
 21世紀を生きる子どもたちの未来が「政治情勢」や 「外交上の配慮」によって左右されることがあってはならないことは言うまでもありません。外国籍の子も含めて学習権を保障することは,民主党がめざす教育 政策の基本でもあります。全国の朝鮮高級学校には,「朝鮮」籍の生徒だけでなく,「韓国」籍や日本国籍を有する生徒も約半数在籍していると聞いております が,朝鮮学校に通う生徒を含めたすべての子どもたちの学習権が等しく保障される制度実現のためご尽力くださるよう,強くご意見申し上げる次第です。