私は約15年かけて蛇の目ミシン(株)の株主代表訴訟の代理人を務めました。この裁判については多くの学者による判例評釈が出ていますが、ここでは実際の裁判で何が問題とされたかを紹介したいと思います。本件は一見非常に複雑に見えますが、本質的な論点は簡単なものでした。簡単な論点について15年も裁判が行われたというところに大きな問題があります。

蛇の目事件の内容
蛇の目ミシン事件とは、極く簡単に言うと家庭用ミシンメーカー大手の蛇の目ミシン工業株式会社の発行済み株式の半数近くを買占めたkが買占め資金をノンバンクから借りていたため、その返済を迫られ蛇の目(会社ともいう)に対し966億円の債務の肩代わりを求め、会社が応じないでいると、買占めた株式を暴力団に売ったとして脅迫され、それを取消すためには300億円が必要であるとして、300億円を脅し取られたうえ、右966億円の債務を次々と蛇の目の関連会社等に肩代わりさせ、そのための担保提供や保証をした蛇の目が最終的に債務を返済したという事件である。
蛇の目は本社ビルや重要な工場を売却処分する等で甚大な損害を被った。
被告は当初、蛇の目の全ての取締役29名であったが、控訴のときに5名に絞った。
銀行出身の取締役2名、蛇の目本来の取締役2名、kに対する迂回融資やその後の蛇の目株の肩代り計画で自らが経営する会社を利用させる等して協力した取締役1名である。