2009年 4月の記事一覧

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09年04月13日 18時53分05秒
Posted by: furihata
Q1.相続税はいくらかかる? いつまで申告?
3ヶ月前、母が死去しました。父は先に亡くなっており、夫婦の間に子供が3人います。遺産がどのくらいあると相続税はかかるのでしょうか。また、いつまでに申告しなければなりませんか。
A1
 相続財産(正味)の評価額が8,000万円以下のときは、相続税はかかりません。相続税の申告期限は、現在、相続開始日(亡くなった日)から10ヶ月以内とされています。
相続税のかかる価格=財産―〔借金+葬式代〕―*基礎控除
* 基礎控除は、5,000万円+1,000万円×法定相続人数と決められており、相続人3名のケースでは基礎控除は8,000万円となります。尚、土地などの不動産は路線価などに基づいて価格を計算しますので、時価(実際の取引価格)と一致しないことにご注意下さい。
 
Q2.遺産分割~土地からみ~
亡母の相続人は子供3人(いずれも男)です。めぼしい遺産としては、長男一家が住んでいる住宅しかありません。次男と三男は自分達にも権利があるからと強く主張しています。長男家族は長年母と同居してきたので、住宅を出たくありません。どう分けたらよいでしょうか。
A2
  子供3人の相続分は各3分の1です。長男が次男及び三男に対し、それぞれ、住宅の価格の3分の1に相当する金銭もしくは他の財産を渡すことにして、住宅を全部長男が相続することができます。代償分割といいます。
尚、所有権移転登記をするときに、遺産分割協議書を作成する方法と弟たちから相続分不存在証明書という書類を出してもらう方法があります。

Q3.遺産分割~金銭援助あり~
亡母の相続人は子供3人(いずれも女)で、遺産総額は5,000万円です。3人の子のうち長女だけ結婚時にお祝いとは別に500万円を援助してもらっています。財産はどう分けたらよいでしょうか。
A3
  長女の受けた500万円を「特別受益」として、相続財産に加えて計算し、3人の具体的相続分は次の通りとなります。
  長女(5,000万円+500万円)×1/3-500万円
=1,333万円
二女及び三女(5,000万円+500万円)×1/3
=1,833万円

Q4.借金も相続?
Aさんは商売に失敗してあちこちに借金を残したままこの世を去りました。Aさんの息子Bさんのところには早くも債権者が殺到し、督促してきています。Bさんはどうしたらよいでしょうか。
A4
  相続の事実を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対し相続放棄の申述を行えば、債権者から追及を受けることはなくなります。
  相続の事実がある以上、積極財産とともに消極財産である負債もまた相続人に承継されます。負債の方が資産より多いときは、実に酷な事態となります。そこで、法律は相続放棄の自由を認めている訳です。
  積極財産の限度で消極財産を承継し、弁済する限定承認という制度もありますが、限定承認をした相続人は財産管理、公告、債務弁済などかなり重い負担を負うことになります。

Q5.相続放棄しても生命保険金受け取れる?
Aさんは、先日夫に先立たれました。子供は二人います。夫の負債が多いので、相続放棄をしたいと思っています。ところが、夫は1,000万円の生命保険に入っており、受取人は「法定相続人」と記載されていました。相続放棄すると保険金はもらえないのでしょうか。
A5
  妻と子供が相続放棄しても、保険金を受け取ることができます。
法定相続分に応じて妻が500万円、子供は各250万円の保険金を受け取ることができます。
  保険契約者(兼被保険者)である夫が死亡保険金受取人を「法定相続人」指定した場合は、特別の事情がない限り、被保険者が死亡した時点での法定相続人たるべき者個人を受取人と指定したものと解釈されています。そして、保険金請求権は、夫の遺産ではなく、指定された相続人自身の固有の財産と解されています。但し、相続税法では保険金を相続財産とみなしており、相続税の課税対象となります。

Q6.遺言書が出てきた
Aさんが死亡した後になって、本人が作成した遺言書が2通出てきました。遺産を分けるにはどうしたらよいのでしょうか。
A6
  日付の後の遺言が優先し、日付の前の遺言で後の遺言と抵触する部分は撤回したものとみなされます。
  遺言者はいつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を取消(撤回)することができます。2通の遺言書のうち日付が後の遺言が有効であり、それに抵触した前の遺言は無効になります。
 尚、公正証書遺言以外は、家庭裁判所に遺言書を提出してその検認を経なければならず、これに違反したときは5万円以下の制裁があります。

Q7.相続~土地価格変動でいつの時価で計算?~
AとBの兄弟二人の父親が亡くなりました。母親は既に亡くなっています。ところが、遺産である土地・建物その他一切の財産をAに相続させるという父の遺言が出てきました。Bは自分にも最低限の権利があると主張し、裁判になりました。相続から3年経って、Aは不動産は渡せないが現金で支払うと申し出た。この間、土地の価格が大幅に変動したので、いつの時点での価格に基づいて金額を算出したらいいのでしょうか。
A7
  現実に支払(価額弁償)がなされるとき、訴訟の場合は事実審(第1審または第2審)の口頭弁論終結時における時価に基づいて算出されます。
  Bは、法定相続分2分の1の半分である4分1の遺留分を有します。遺留分は相続人が遺産のうち(遺言にかかわらず)これだけは自分のために残してもらえる部分のことです。
遺言はBの遺留分を侵害していますので、Bは遺留分減殺(げんさい)請求をしたのです。この裁判でBの請求が認められると、不動産についてBが4分の1の持分を有することとなるので、Aは共有持分の代わりに金銭を支払うと申し出たものです。
従って、金銭支払(価額弁償)時において目的物(共有持分)と等価でなければならない訳です。

Q8.遺産の中身の調査
  遺産に何があるか分からないのですが、どうしたらよいでしょうか。
A8
  預貯金は金融機関に照会することができます。弁護士に依頼して弁護士照会を利用してもよいでしょう。銀行で貸金庫の利用がなかったかも調べるとよいでしょう。有価証券は証券会社からの通知書、不動産などの固定資産は納税通知書から判明することもあります。

Q9.株式の評価
  遺産に含まれる株式の評価はどうしたら分かるのでしょうか。
A9
  ①上場株式は証券取引所で公表されている取引価格により、②非上場株式については、業種が類似する会社の上場株式取引価格を基準にして、資産内容、収益配当、の状況を考慮して決める方法や、会社の純資産額を発行済み株式数で除して一株あたりの評価額を決める方法があります。詳しくは税理士にお尋ね下さい。

Q10.内縁の妻と借家権
  内縁の夫が借りていた部屋に住んできましたが、彼が死去しました。私は出て行かなければならないのでしょうか。
A10
  出て行かなくてよいでしょう。内縁の夫に相続人がいないときは、内妻であるあなたが大家に反対の意思表示をしない限り、ご主人の権利義務を承継します。相続人がいる場合でも、裁判例では、内妻は、相続人が取得した借家権を援用し、大家に居住し続けることを主張できます。また、相続人からの明け渡し請求は、権利の濫用として退けられます。

Q11.葬式費用
  母が亡くなり、長男が喪主となって葬式を行いました。長男が支払った費用を遺産から出すことはできますか。
A11
  できます。葬式費用は喪主が負担すべきものですが、香典は葬式費用の一部をふたんすることを目的としていますので、まずこれで賄い、不足額については相続財産に関する費用として相続財産の中から支払われることになります。

Q12.次男には借金問題で迷惑をかけられっぱなしなので、財産を渡したくありません。できるでしょうか。
A12
  次男が納得して協力する気があれば、次男自身が遺留分放棄許可の審判を家庭裁判所に申し立てるという方法があります。後は、次男に財産を渡さない遺言書を書くことです。
もう一つは、家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求する方法です。被相続人に対する虐待または重大な侮辱、その他の著しい非行(廃除原因といいます)があると裁判所が認めると、次男の相続人資格が失われます。廃除原因は、虐待・侮辱・非行の程度、当事者の社会上の地位、家庭の状況、教育制度、被相続人側の責任の有無その他一切の事情を考慮して裁判所が決めます。金品の持ち出し、多額の借金をし、消費者金融の後始末をさせて行方不明になっているケースで廃除を認めた例があります。

Q13.相続人の所在不明
  共同相続人の一人である兄は、借金を抱えたまま数年前より音信不通になっています。遺産分割協議はどのようにしたらよいでしょうか。
A13
  家庭裁判所に兄の不在者財産管理人の選任を申立て、選任された管理人と遺産分割協議をすることができます。また、兄の生死が7年間以上明らかでないときは、同じく家庭裁判所に申し立てて、失踪宣告をしてもらうと、兄は死亡したものと扱われ、兄に相続人がいれば、その相続人と遺産分割協議をすることができます。

Q14.遠方の裁判所に調停を申し立てられた
  兄が東京家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。私は遠方に住んでいるので、出席できません。どうしたらよいでしょうか。
A14
  家事調停には本人が出頭するのが原則ですが、やむを得ない事情があるときは代理人を出頭させることができます。弁護士以外の者を代理人とするときは、家庭裁判所の許可が必要です。

Q15.遺言の作成
  私が死んだ後、子供達の間で争いが起きないよう遺言を書いておきたいのですが、どのように書いたらよいでしょうか。
A15
  普通方式の遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類がありますが、多く使われているのは秘密証書を除いた2種類です。自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、指名を自書し、押印するだけで作成でき、便利ですが、遺言者の死亡時に誰が保管し、きちんと相続人らに出してくれるのかという不安があります。また、遺言の有効性が争われることも多いです。この遺言の保管と有効性の争いの問題を避けるには、公証役場が遺言を保管してくれる公正証書遺言が優れています。公証役場で、遺言内容を公証人に口授し、2名以上の証人に確認してもらい、公証人に遺言書を作成、保管してもらいます。

Q16.検認
  母が亡くなり、部屋を整理したところ、「遺言」と書かれた封筒が出てきました。封をしてあるのですが、開けて中を見てもよいでしょうか。
A16
  勝手に開けてはいけません。5万円以下の過料の制裁があります。被相続人の住所地の家庭裁判所に提出して検認の手続を取らなければなりません。相続人などの立会の下で裁判所が開封し、検認調書を作ってくれます。検認を済ませたからといって、遺言が有効であると認めるものではありません。
09年04月13日 18時51分34秒
Posted by: furihata
離婚事件の設例(婚約解消、不倫を含む)

Q1.いつの間にか結婚していた?
A男は、見合いしたB女と結婚することになり、新婚旅行後、婚姻届を役所に提出しに行ったところ、A男は、見知らぬC女と結婚したことになっていました。A男はどうしたらよいのでしょうか。
A1
  C女を相手に婚姻無効の調停を申し立てます。
役所はA男とC女が戸籍上結婚しているので、重婚禁止の規定に触れるとして婚姻届を拒否します。しかし、A男にはC女と婚姻する意思はないので、婚姻は無効です。役所から婚姻届の写しを入手し、それを証拠(A男の署名が偽造)にして調停を申し立てるのがよいでしょう。C女が無断で届出をしたことが明らかになったときには、調停が成立するか、合意に相当する審判で婚姻無効を認めてもらえることになります。もしも調停手続が不調に終わったときは、婚姻無効確認の人事訴訟を起こさなければなりません。このようにして、調停、審判または判決が出てから、戸籍を訂正し、その後にB女との婚姻届が受理されることになります。
  虚偽の婚姻届をした者は公正証書原本不実記載罪などに問われ、刑事責任を負うことがあります。

Q2.離婚届にサインして相手に渡したが、撤回したい
夫と喧嘩し、激しい口論の末、離婚届に署名捺印して夫に渡してしまいましたが、後で冷静に考えると、今後の生活不安もあり、離婚はできません。届を出されたら離婚になってしまうのでしょうか。
A2
 役所で離婚届の不受理申出という手続をしておけば、離婚届を出されても離婚は成立しません。
  手続は役所(本籍地が望ましい)の戸籍係で用紙をもらって必要事項を記入して提出するだけです。ただ、不受理申出の有効期間は6ヶ月ですので、なお無断で離婚届を提出される不安があるときは6ヶ月毎に同じ申出をすることになります。不受理申出の前に離婚届が提出されてしまったときは、離婚無効確認の調停を家庭裁判所に申し立てなければなりません。

Q3.協議離婚したが、財産は分けてもらえないのか?
2ヶ月前に協議離婚しました。その際、子供の親権で争いになり、どうしても欲しかったので、夫に言われるままに、「財産は一切請求しない」という念書を書いて差し入れてしまいました。夫から財産を分けてもらうことはできないのでしょうか。
A3
  念書その他タイトルいかんにかかわらず、書かれている内容で判断されます。
内容は、夫に対し財産的請求をしないことを約束した(権利の放棄)と解されます。自分の意思でサインした以上、相手に脅かされたり、無理矢理書かされたなどの自分の意思に反して書かされた事情がない限り、慰謝料や財産分与の請求はできないと考えられます。
  しかし、養育費については、それが子の親に対する権利という性格が強いので、これまでも放棄する趣旨であったかは大いに疑問です。

Q4.離婚~会社名義の財産はどうなるの?~
離婚に際し、夫の経営する会社名義の財産は財産分与の対象となるのでしょうか。
A4
  会社には固有の法人格があるので、夫とは別人格の第三者ですから、その保有財産自体は財産分与の対象となりません。
したがって、夫及び会社代表者が話し合いに応じなければ会社財産の分与を求めることは困難です。
しかし、夫自身が持っている会社の株式は分与の対象となります。市場性がない場合、株式の評価の問題はありますが、実質的に会社財産が分与の対象として計算されることになります。
また、会社形態を取っていても、実質は個人経営で夫と同等の立場である場合は夫の財産として分与の対象となる可能性があります。

Q5.離婚~住宅ローンが残っている~
この度、協議離婚することになりました。子供はいません。主な財産は自宅で、夫が所有しているのですが、多額の住宅ローンが残っています。このような場合はどう分けたらよいのでしょうか。私(妻)もローンの連帯債務者(保証人)になっている場合はどうなりますか。
A5
 住宅(土地・建物)とともに、夫婦の共同生活で形成された債務も財産分与の対象となります。
住宅については、財産分与の対象財産の評価に際し、不動産価格から債務を引くことにより実質的に両者が債務を負担したのと同様にすることが考えられます。例えば、住宅の価格が5,000万円でローンの残高が3,000万円とすると、2,000万円の価値があるものとして、その半額の1,000万円を財産分与額として加えます。
その際金銭で支払を受けずに、住宅自体の分与を受けることも可能ですが、夫が住宅ローンの返済を延滞したときは住宅を競売にかけられて失ってしまう危険があります。
住宅ローン債権者との関係では夫の債務であるものの、二人の間では支払の分担を取り決める方法も考えられます。しかし、妻が分担の約束を果たさない場合は、夫が債権者に対し全責任を負うことになります。
  夫婦が連帯債務者になっている場合(妻が連帯保証人になっているときも同様です)、住宅ローン債権者が承諾しない限り(承諾することは通常ありません)、二人ともローン完済まで責任を負うことになります。

Q6.養育費・婚姻費用の算定
家庭裁判所では子供の養育費、正式離婚前の婚姻費用(生活費)分担額は、どのように決められるのでしょうか。
A6
  最近では、裁判官達が作成した算定表(養育費・婚姻費用算定基準とも呼んでいます)をベースにして調停、審判、協議されることが多いです。この基準では夫と妻の税込年収と子供の人数・年齢に応じて、2万円程度の幅で養育費や婚姻費用の金額が掲載されています。手に入らないときは御一報下さい。

Q7.離婚~慰謝料、養育費を全く払ってこない~
夫と離婚する際に、夫が慰謝料と養育費を分割で払う約束を書面でしましたが、全く支払ってきません。どうしたらよいでしょうか。
A7
  分割で支払うという書面が家庭裁判所の調停調書や公証役場で作成した公正証書であるか、二人で作成した協議書、合意書などであるかによって異なります。
  二人で作成した合意書などの場合は、地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を起こすことが必要です。訴訟の結果、請求を認める判決が出たり、和解ができれば、その判決正本や和解調書を利用して、公正証書と同様に、後記の強制執行手続を取ることができます。
  家庭裁判所の調停調書があるときは、申立により家庭裁判所から夫に対し、「履行勧告」や「履行命令」を出してもらえます。正当な理由なく履行命令に従わないときは、10万円以下の制裁があります。しかし、あなたに強制的に支払わせることはできません。この場合も強制執行手続を取ることになります。
  強制執行は夫名義の財産に対する差し押さえですが、実効性があるのは、給料と預貯金です。ただし、給料については勤務先の会社名と所在地、預金については銀行名及び支店名まで把握していなければなりません。
  慰謝料の場合、例えば300万円を分割で支払う約定であった場合、「2回分以上遅滞したときは期限の利益(分割の利益)を失い、残金を一括して支払わなければならない」といった記載があれば、300万円全額を請求できます。預貯金を差し押さえる場合、残高もしくは請求額まで差し押さえることができますが、給料の場合、税金及び社会保険料を引いた残額(手取)が44万円以下のときは、その額の4分の1までしか差し押さえられません。
養育費の場合、通常、上記のような残金を一括支払わなければならない場合の記載は設けられていません。預貯金の場合、遅滞分しか差し押さえできません。しかし、給料を差押さえる場合は、遅滞分だけでなく将来の分も含めて(養育費の合計が600万円だったら600万円に達するまで)1回手続を取ると、毎月差押さえることができる上、上記手取額の2分の1まで押さえることができます。

Q8.離婚~養育費~
元妻が子供を引き取って離婚し、養育費をずっと支払ってきましたが、この度私(元夫)が再婚し、子供ができました。生活がきつくなるので、今まで通り養育費を払うことができません。どうしたらよいでしょうか。
A8
  養育費の支払をすぐに止めるのではなく、元妻と話し合って事情を説明し、減額を求めてみて下さい。話し合いがつかないときは、家庭裁判所に養育費減額の調停を申し立てて、調停委員に事情をよく説明して下さい。調停申立をしなければ、履行勧告、履行命令の対象になる他、強制執行を受けるおそれがあります。

Q9.離婚原因
  夫は普段は優しいのですが、酒を飲むと大声を出し、暴力を振るいます。離婚は認められるでしょうか。
A9
  民法で定められている離婚原因の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たると考えられ、認められるでしょう。粗暴な性格や酒乱に起因する執拗に繰り返される暴行はそれ自体上記事由に該当します。一過性の暴行で、その原因が妻にある場合は離婚が認められないことがあります。

Q10.有責配偶者
  夫の浮気が判明し、問い詰めたところ、逆に夫は家を出てしまい、離婚すると言い出しました。夫からの離婚は認められますか。
A10
  婚姻を破綻させた原因を作ったもの(有責配偶者といいます)からの離婚請求は認められません。しかし、夫婦の別居が長期間にわたること、夫婦の間に未成熟の子がいないこと、並びに相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に過酷な状態に置かれないことを条件に、有責配偶者からの離婚請求を認めた判決があります。

Q11.協議離婚に応じないときはどうする?
  離婚をしたいのですが、相手方が協議に応じません。どうしたらよいでしょうか。
Q11
  相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てます。

Q12.調停に出頭してこない
   相手方が調停に出頭してこなかったときはどうなりますか。
A12
  家庭裁判所調査官に出頭勧告をしてもらいましょう。それでも出頭しないときは、調停は不成立で終了します。訴訟を起こすことになります。

Q13.裁判所で離婚したときも届出は必要?
  調停、訴訟での和解、判決によって離婚が成立した場合にも届出が必要ですか。
A13
  届出が必要です。調停、和解の場合は、それぞれ調停調書謄本、和解調書正本を、判決の場合は判決正本と判決確定証明書を添付して、市区町村に届け出ることになります。

Q14.離婚と改姓
  離婚した場合、名前を変えなければなりませんか。
A14
  婚姻によって氏を変更した配偶者は、婚姻前の氏または離婚の際称していた氏のいずれを選んでもよいことになっています。ただ、離婚の際称していた氏を称するときは、離婚の日から3ヶ月以内に届け出なければなりません。

Q15.親権者の指定
裁判において親権者を指定する場合の判断基準を教えて下さい。
A15
① 父母の健康、精神状態、生活態度、経済状態、家庭環境、住居、教育環境、②父母の子に対する愛情の度合い、③看護補助者の有無、補助の程度、④父母の再婚の可能性、離婚の有責性、⑤子の年齢と意思などを総合的に考慮して決めるとされていますが、幼児の場合、従前の養育状況で決まるようです。

Q16.親権者の変更
  協議離婚または裁判離婚で定められた親権者の変更はできませんか。
A16.親権者変更の家事審判を、子の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。親権者の養育監護の現状に問題があるときは認められることがあります。

Q17.退職金を半分取れるか?
  退職金は財産分与の対象になるか。
  既に受領した者は通常預金になっているので分与の対象となります。至急が決まったものも分与の対象となります。将来支給される退職金については不確定要素(退職時期、支給見込額、支給されない場合があること)があるため、問題ですが、財産分与の決定に際し考慮する裁判例が多くなっています。

Q18.年金分割
  離婚調停申立に際し、年金分割の案分割合はどうしたらよいでしょうか。
A18
  現在の夫婦関係調停申立書には、「申立の趣旨」の「夫婦関係解消」の中に「申立人と相手方との間の別紙  (年金分割のための情報通知書)記載の情報にかかる年金分割についての請求すべき案分割合を
□0.5    □(   )と定める」
と不動文字で書かれており、分割を求める側(通常は専業主婦)が「0.5」つまり婚姻期間の保険料納付実績の半分(法律で認められる最大限です)の分割を求めることが多いということを前提にしているといえるでしょう。

Q19.婚約解消
  婚約を解消されました。相手方に損害賠償請求をすることができますか。
A19
  嫁入り道具の返還や結納の返還を求めることはできます。また、正当な理由がなく婚約を解消した当事者は損害賠償責任を負います。裁判で、正当な理由とされたのは、相手方が第三者と情交を結んだ場合、事実上婚姻した場合、相手方の性格異常、肉体関係を強要された場合などがあります。正当理由が認められなかった例としては、親の判定、性格の不一致、相手方の父の前科の発覚、信仰の相違などがあります。

09年04月13日 18時49分12秒
Posted by: furihata
設例
父が最近亡くなり、賃貸アパートを相続しました。Aは賃借人として2部屋を、その娘であるBは1部屋をそれぞれ、詳細は不明ですが、20年位前から賃借してきました。Aの家賃合計は6万円、Bの家賃は3万円です。賃貸借契約書は既に紛失しており、詳細な条件は不明です。AとBは、パート収入しかないのに、パチンコなどギャンブルが好きで、父の代から家賃滞納の常習者でした。AがBや他の借家人の家賃も勝手に預かって、まとめて父に持参していた時期もあり、一部をAが使っていたこともあったようです。入金管理の帳簿や家賃領収証を手がかりにして、遅れている家賃の額を確定しました。Aは24万円、Bは18万円を延滞していることを認めました。実は、父の代のときで、いつ頃か不明ですが、Aは2部屋の壁を勝手に壊して事実上1部屋にしてしまい、Bは断りもなく第三者を同居人として入居させたことがありました。今後も更に家賃を滞納したり、勝手なことを行うおそれがあるので、この際、A及びBを退去させたいのですが、どうしたらよいですか。

1.賃貸借契約の約定が今となっては全く不明ですので、民法の賃貸借の条文がそのまま適用されると考えられます。賃貸借の期間は定めがないと判断されます。Aが壁を壊したのは無断改造として用法違反、Bが他人を入居させたのは無断転貸に、それぞれ該当し、賃貸借を解除することができるとも考えられます。しかし、賃貸人である父がこれらの事実を知った後も、賃料を受取り続けてきた場合、これらを黙認、承諾したと認められることもあり得ると思われます。A、Bが当時の賃貸人である父が明示または黙示に改造または同居人の追加を承諾していたと主張することも予想され、改造等からかなり時間を経過していたときは、その主張が認められる可能性が出てきます。当初からA、Bが父の承諾を主張しているときは、賃貸借を解除して裁判を起こしても、用法違反や無断転貸を理由とする解除が認められないおそれがないとはいえませんので、訴訟に踏み切るかどうかは慎重に考えるべきでしょう。家賃の支払時期は、契約書を交わす場合当月末日までに翌月分を支払うとされるのが一般的ですが、民法では当月末日に当月分を支払うこととされています。これを前提にしても、Aは4ヶ月分、Bは半年分を延滞しているので、延滞賃料を(毎月支払うべき賃料とは別に)期限を定めて支払うよう催告した上で、支払がなかったことを理由に賃貸借契約の解除を通知する方法が考えられます。催告及び賃貸借解除通知は、いずれも配達証明付内容証明郵便にて発信します。
2.そして、建物明渡しを求めて訴訟提起する訳ですが、直ちに裁判所が解除の効力を認めてA,Bに対し明渡を命じる判決を出す訳ではありません。ABにとって借家は長年の生活の基盤であり、その生存権(憲法25条)確保の見地から、裁判所が家賃滞納の事情(ABの困窮等)を配慮して、滞納家賃の解消を約束させて和解勧告を行う場合もあります。裁判所が和解勧告をするかどうかは、A,Bが提案する滞納解消の条件・期間によります。和解となる場合は、AまたはBが約束通り支払わなかったときの建物明渡を含むペナルティー等の「和解条項」が極めて重要になります。残念ながら当面賃貸借が継続する訳ですから、通常の賃貸借契約書に書かれているような賃借人が守るべき条件や禁止事項を明確にし、「和解条項」に入れることも検討した方がよいでしょう。代理人を立てて訴訟提起したのであれば詳しく説明を受けて下さい。代理人を立てていないのであれば、別途弁護士等に相談するか、直接裁判官に意味をよく確認して、自ら「和解条項」を決めなければなりません。
3.A、Bが裁判に欠席したり、延滞解消の方法を明示しなかったときは、裁判所は、家賃滞納による解除の有効を認め、建物明渡を命じる判決を出します。判決に従って、A、Bが明渡してくれればよいのですが、出て行かないときは、建物明渡の強制執行を申し立てることになります。強制執行の内容は簡単にいいますと、部屋の中の家具(A、Bらの所有物です)を外に持ち出し、倉庫に保管させることです。裁判所に納める費用の他、搬出、保管等にかなりの費用がかかってしまう難点があります。そこで、明渡の強制執行を行わずに、判決を得てから、あるいは賃貸借解除通知を出した後に、A、Bが任意に退去、つまり他へ引越すことを求め、その具体的な条件を交渉することがよく行われます。退去・引越の見返りとして、例えば家賃は明渡日の分まで支払ってもらうが、立ち退き完了後に引っ越し代の(一部)として返還するとか、延滞賃料を免除すること等が行われています。大家としては損した気持にもなりますが、裁判や明渡しの強制執行までに要する費用や悩まされている賃借人に出て行ってもらうことの利益を考慮すると、こちらの方が結果的に得となる場合が多いでしょう。明渡し完了を賃貸人が確認した後にA、Bにお金を渡すという条件にすると、明渡し自体がスムーズに行われると期待されます。
4.もしも、明渡しの合意が成立したが約束の期限にきちんと明渡が完了するか不安があるときは、建物所在地を管轄する簡易裁判所に即決和解を申し立てることをお勧めします。やはり和解条項を予め決めておく必要がありますので、弁護士等に相談するか、代理してもらうのがよいと思います。
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