今日の新聞記事を見て、ここまで来たかと感じた。
不動産の任意売却は、住宅ローンを払い続けられなくなった方が負債を減らすためによく試みる方法である。
地価下落もあって、かなりの割合で不動産の時価が抵当債務の総額を下回っているケースがある。下手をすると、1番抵当権者でさえ、代金から全額を返してもらえないこともある。そういった場合でも、2番以下の抵当権者は、「消し料」などと呼ばれる抵当権抹消の対価をもらって抹消に応じ、任意売却が実現する。消し料は実質的には、1番抵当権者等に渡すべき弁済金の一部を回しているのである。この消し料の相場とかけ離れた法外な要求をする後順位抵当権者の抵抗で、売却を断念することも少なくない。その後は、通常配当を受けられるのが確実な1番抵当権者の申立で裁判所による競売手続が始まるが、競売が終了するまで早くても半年位はかかる。
新法案は、買い手及び代金額が決まったときに、1番抵当権者が同意すれば、他の担保権者が反対しても(対抗手段はその者が自ら競売申立をしたり、5%以上高い価格での買い取り先を見つけること)、1番抵当権者の申立で、1ヶ月で裁判所が担保権の消滅を許可するというものだ。後は代金分配で担保権(抵当権)の順位に従って分配される。こうなると、簡易迅速な民間主導の競売手続という気もする。
売り主、仲介業者、1番抵当権者にとっては、それぞれ、売却遅延によるローンの金利がかさまない、買い手を見つけた苦労が報われる、債権の早期回収になるといったメリットがある。また、任意売却なので、買主もスムーズな引渡を受けられる。不動産の円滑な流通を促すことになるだろう。