「不利な情報は先に言って下さい」

私が日頃依頼者に対し思っている言葉です。

高いところからものを見ること(前回のブログ「裁判官みたいなこと言うな」ご参照)と同様に重要なのが、質問です。

質問は事実を把握する最も重要な武器といえます。

依頼者は、自分にとって不都合なことは、自分の弁護士にさえなかなか話してくれません。

もちろん、依頼者が自分に不都合なことを隠したい、言いたくても言えない、本人や周りの様々な事情により言いたくない気持ちも分かります。

しかし、事前に不利な情報をも収集してこそ、相手に、そして裁判に勝てるのです。

そこをうまく聞き出すのが弁護士の技量です。

ところが、これは「言うは易く、行うは難い」です。

依頼者に十分な質問ができないと、不利な事実を聞き出せないまま、依頼者から聞いた有利な情報のみが事件の全体だと思って裁判に臨んでしまうことになりかねません。

ところが、裁判には相手がある。相手も同様に、自分に有利な情報(つまりこちらには不利な情報)を収集しています。そして、相手から、こちらに不利な情報(証拠)を突如突きつけられる。こうなってしまうと、対策のとりようもありません。

一方、こちらに不利な情報が事前に分かっていれば、今後の展開や相手の出方を予想して、事前に手を打っておくことができます。

そのため、弁護士は依頼者に対し「不利な情報は先に言って下さい」と言いたいのです。

私は、このようにはっきりと言う時もありますが、「質問を繰り返す」ことにより、依頼者から有利な情報だけでなく不利な情報も聞き出すようにしています。

疑問が解消するまで、質問をねちっこく続けます。返事があっても、再度、形を変えて「なぜ」と聞き返す。それでも不十分なら、再度「なぜ」と聞き返す。それくらいしないと、良い答えを得ることができません。証人尋問も同じです。

信濃法律事務所

弁護士 臼井 義幸