海に潜ると、様々な「青」を感じることができます。

伊豆の海、沖縄の海、或いは海外の海。繋がった同じ海なのに、場所によって様々な青色を見せます。

例えば、沖縄の海は、鮮やかな淡いエメラルドブルーが印象的です。

これは、沖縄の海の透明度の高さによるものです。透明度が高いということは、光を遮る物質が少なく、青い光が海底に届きます。しかも沖縄の沿岸部は水深が浅く、さらにそこには白い砂とサンゴ礁が太陽光線の青を反射させるため、鮮やかな淡いエメラルドブルーを創り出すのです。そして、サンゴ礁の外側、水深が深い海の色は濃い青になります。これにより、沖縄の海は、淡い青から濃い青まで、様々な色を見せるのです。

こうして自然に接すると、我々が一口に「青」と言っているものが、実に多様なグラデーションから成り立っていることが分かります。全ての存在はこのように連続的に変化するものといえます。

我々は、色彩というと24色と考えがちです。確かに、代表的な色相環である「オストワルト色相環」は、24色から成り立っています。

しかし、自然に存在する色は24色に限りません。「日本の伝統色 第6版」(大日本インキ化学工業())では、ピンク系、赤系、オレンジ系、ゴールド系のように合計300色もの色があげられています。

さらに、日本に古来より伝わり深く生活に息づく色彩は、1100余種という膨大な数に及んでいます。一見青色に見える色でも、藍色、藍錆、藍鉄色、藍鼠、藍海松茶、青、青褐、青朽葉、青白橡、青墨、青竹色、青丹、青鈍、青緑、青紫など数十種にもなります。

もちろん、これは日本人が識別した色に固有色名を与えたにすぎないのであり、全ての青を網羅している訳ではありません。

存在するものは連続しており、人間はそのいくつかをとり出して色名を与えたにすぎません。言葉には限りがありますが、存在は無限に連続していると考えられます。

同様に、「死」も連続的なプロセスと言えます。

死は、かつては一義的に決めることのできる自明の出来事でした。脳、心臓、肺全ての機能は一瞬に停止したからです。しかし、医療機器が発達し「脳死」という新しい概念が生まれて、「死」は段階的なプロセスとなりました。

心臓死や脳死は、言葉の上では瞬時に心臓が止まったり脳機能が停止したりするイメージがありますが、実際には無数の細胞が次第に機能を停止してゆき、それが結果として心臓死とか脳死と評価されるにすぎません。

我々は、ある時間軸を決めて心臓死とか脳死とか評価しますが、それに至る過程は連続的なプロセスです。ただ、我々がそれを感知できないだけです。

同様に、弁護士の思考、問題に対処する解決策も単一ではなく、無数のオプション(選択肢)があるといえます。

弁護士の重要な資質は「オプション提案力」です。オプションの有無が仕事の品質、結果の良し悪しに決定的影響を与えるからです。正解よりも選択肢を求めるのです。

私は、依頼者からの相談には、できるだけ多くのオプションを提示するようにしています。

明らかに違法でない限り、私は「それはダメです」とは言いません。リスクの高いものから低いものまで、数多くのオプションを依頼者に提示します。

弁護士は助言の結果さらに言えば訴訟の勝敗に直接責任を負う訳ではないですから、依頼者としては弁護士に最終判断を依存できません。弁護士はあくまで選択肢を提供しその見通しを説明し、依頼者は弁護士の説明をもとにその是非を検討し方針を決めます。

訴訟に限らずビジネスに限らず、唯一無二の正解がある訳ではなく、選択肢があるだけといえます。

そして、そのオプションの中から依頼者自身が選びとったその選択肢こそが依頼者にとって良い解決を導くべく、我々弁護士は一つでも多くのオプションを考え抜くべきであると思います。

信濃法律事務所
弁護士 臼井 義幸