11月7日(土)の夜、エルプラザにて、札幌陽は昇る会(札幌クレ・サラ被害をなくす会)主催の公開学習会「ギャンブル依存症の回復のために」が開催されました。
 講師は、北海道立精神保健福祉センターの田辺等所長、高名な精神科医の方です。私自身が担当した心神喪失者等医療観察法の事件で一度ならず「審判員」を務められたことがあるので、テーマと講師の両方に惹かれて参加しました。
 
 講義は、100分近くにわたって、パワーポイントとレジュメを使って行われましたが、いきなり冒頭に
 「依存症 やめれる時には やめたくない! やめたい時には やめられない!」
という標語(?)が登場しました。
 
 その後、ギャンブル依存症の定義、国際的に認知されるようになった経緯、診断基準、ギャンブル依存症かどうかのチェックリスト、いくつかの深刻な事例紹介、相談件数と比率、アルコール依存症との合併症が多いこと、「依存症3要因」といったお話が続きましたが、前半は正直なところ聞いたことがある話が多いなぁ、と思っていました。

 でも、出色だったのは、後半の対策論。
 さすが臨床医としてたくさんの方の治療に関わってきた方だけに、ご本人のみならず、家族や弁護士・司法書士を始めとする援助者が注意すべきこと、何を最優先順位にすべきか、といったお話が具体的かつ説得的で、大いに勉強になりました。
 
 とりわけ印象に残った1枚のスライド。
 「誤解してませんか?
  ・借金は依存症の結果としての必発の「合併症」です。
  ・「合併症だけの治療」は依存を再発する条件です。
   (例:肝臓病だけを治し、アルコール依存症を「飲める体」にする)
  ・皆が借金対策を考えている間は、自分の本当の問題(依存症)を認めなくて済む
   ことになります。」

 せっかくの機会なので、私はあえて質問しました。
 「債務整理の相談に来られた方の、多重債務に陥った原因がギャンブル依存症だとわかった場合、あえて受任を保留してでも、まずはギャンブル依存症の治療を優先すべきでしょうか?」
 田辺先生の答えはYES。
 アメリカ合衆国の大半の週には「ドラッグ・コート」という、薬物依存症の被告人に対し、本人の選択により、刑罰に代わり治療プログラムを施すというシステムがあるそうですが、それと同様、「私に債務整理を依頼するのなら、まずはここにお行きなさい」と言って、北海道や札幌市の精神保健福祉センターとか、ギャンブル依存症の相談・援助機関に行ってもらい、その結果を確認するまでは、安易に受任してはいけない、ということでした。
 う~む、これまでの私の事件処理は「依存を再発」させるものだったのか・・・。

 なお、講演会場では、田辺先生の著書
「ギャンブル依存症」
(NHK出版、¥714)が大幅割引価格で販売されていましたが、何と私は、会場に向かうタクシーでわざわざ紀伊國屋書店に立ち寄り、同じ本を定価で買って持参するというお馬鹿なことをしたのでした・・・(>_<)