12月11日の夜、かでる2・7のホールにおいて、札幌弁護士会主催の「市民フォーラム 語り継ぐ北海道のハンセン病問題」が開催され、250人以上の方が参加されました。
 私は、同弁護士会の常議員会(常設議会のような機関)に出ていたため、終了間際の参加となってしまったので、フォーラムの内容のご紹介は他に譲ることとしますが、今日は、ハンセン病に対する社会的偏見を正面から取り上げた 映画「砂の器」のことに触れたいと思います。

 私がこの映画を初めて観たのは、かれこれ20年余りも前、まだ京都で司法浪人(司法試験の受験生)をしていた頃でした。
 東京の蒲田駅構内で未明に死体が発見され、しかも、その顔面は何者かによって原形をとどめないほど石でめった打ちにされるという凄惨な殺人事件であることが判明するところから始まるこの映画。
 最後は、故芥川也寸志氏作曲の交響楽「運命」の流れる中、被疑者(容疑者)の逮捕に先立つ捜査本部の会議風景と、ハンセン病に罹患したがために故郷を追われるように去って流浪の旅に出た父子の悲しい旅の回想が交互に繰り広げられる、非常にインパクトの強い作品です。
 主なキャストは、犯人の和賀英良役に加藤剛、被害者役に緒方拳、犯人を追い続ける刑事役に丹波哲郎と森田健作、犯人の恋人役に島田陽子、婚約者役に山口果林という顔ぶれ。
 私が知る限り、映画が原作
(松本清張の著作)を超えたと評価されている数少ない作品ではないかと考えています。

※映画のあらすじ
"http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD28578/comment.html
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 私は、初めてこの映画を見て、(和賀英良こと)本浦秀夫とその父親が差別・迫害を受けながら流浪の旅を続けた挙げ句にたどり着き、つかの間の安らぎを得た「亀嵩」(かめだけ)の小さな街に惹かれ、司法浪人中に「青春18きっぷ」を使って、京都からはるばる木次線の亀嵩駅まで行き、映画の中にも出てくる駐在所や算盤工場、そして映画製作の記念碑などを見て回りました。
(弁護士になってからも、米子で会議に参加した機会に、レンタカーで再訪したこともあります。)

 その後、1991年10月1日、忘れもしない論文試験合格発表の前夜、TVでリメイク版が放映され、その時は和賀英良役に佐藤浩市、今西刑事役に田中邦衛などのキャストでしたが、そこでは流浪の旅の発端が、父親のハンセン病ではなく犯罪であり、今西刑事と和賀英良との対決場面を後半のメインとするなどの工夫は見られましたが、いかんせん映画に比べればあまりにもインパクトが弱かった。
 また、2004年にはTBSが日曜夜に連続ドラマ化し、そこでも和賀英良役に中居正広、今西刑事役に渡辺謙といった豪華キャストでしたが、これまた映画とはまるで別ものでした。

 今後ともTVでは新たな「砂の器」が製作されるでしょうが、おそらくあの映画を超えることはできないでしょう・・・。

 このたび、11日夜のハンセン病市民フォーラムに参加して、久々にこの映画のことを思い出した次第です。