本日、判決言渡し!
実に1か月半ぶりの更新です(^_^;)
本日(3月26日)、注目すべき判決の言渡しがあります。
その1つは、言うまでもなく、宇都宮地方裁判所での、足利事件の再審公判での判決言渡し。無罪判決というのは確実ですが、問題は、同地裁が、菅家さんを無実の罪で無期懲役に処し(東京高裁、最高裁も支持)、しかも再審請求の第1審でDNA再鑑定を認めないまま棄却したことの誤判原因をどう総括し、菅家さんにどのように謝罪するかという点が注目されています。
もう1つは、私自身も原告弁護団に関わっている、新・北海道石炭じん肺訴訟の、札幌地裁での判決言渡し。これは、道外の方々にはあまり知られていないと思うので、少し長くなりますが、判決言渡しに先だって原告弁護団が司法記者クラブ向けに発表した解説文を引用してご紹介します。
これから提訴前のミニ集会に向かいます。判決が出たら改めてご報告いたします。 新・北海道石炭じん肺訴訟 平成22年3月26日判決に関する争点と判決の意義
2010年3月17日 新・北海道石炭じん肺弁護団
1 判決概要
[事件番号・事件名]
札幌地裁平成20年(ワ)第1119号、同第3802号
新・北海道石炭じん肺訴訟(第3陣第4次・5次訴訟)損害賠償事件
分離結審分(対象原告15名;別紙参照)
[判決日時]
平成22年3月26日 午前11時30分
2 判決に至る経緯と争点
(1)判決に至る経緯
新・北海道石炭じん肺3陣訴訟はじん肺患者ないしその遺族を原告とし、国に対してじん肺の発生またはその増悪を防止するための規制権限を行使することを怠ったことに基づき国家賠償法に基づき損害賠償を求めている訴訟であるところ、平成19年以降1次から5次まで、合計375名が国を被告として提訴してきた。
国は,第3陣訴訟について、先行した第1陣・第2陣訴と同様に,いわゆる筑豊じん肺最高裁判決にいう要件を満たす者については和解に応じてきていた。今後も基本的にはこのような対応を崩していない。
しかしながら、国は,別紙15名の原告については、不法行為の消滅時効期間(民法724条)である3年が経過しているとして、消滅時効を援用したことから、この点につき判決が下されることになったものである。★別紙は省略
(2)争点①
15名について、民法724条の時効期間が経過しているか。
・民法724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから三年間行使しないときは、時効によって消滅する。
・国の主張の概要
「損害を知ったとき」→ 管理区分決定・合併症決定・死亡など
「加害者を知ったとき」→ じん肺に関する国の責任を明らかにした筑豊じん肺最高裁判所判決が平成16年4月27日に出されているのであるから、この周知期間を経過した時点で加害者が国であることを知ったことになる。周知期間は1年を超えない。
⇒ 平成20年4月の4次提訴時点で、上記最高裁判決から約4年。惟以前に「損害を知った」すなわち最終の管理区分決定・合併症認定・死亡の事実があった原告については、「損害及び加害者を知った」ときから3年を経過しているから、消滅時効期間が経過している。
・国の主張の問題点(原告側の主張要旨)
民事訴訟は、紛争を、その訴訟の当事者間においてのみ、相対的に解決するものである。それゆえ、筑豊じん肺最高裁判所判決が国の責任を認めたからといって、その訴訟の当事者になっていなかったじん肺被害者について国の責任が認められたことにはならない。本件の原告が筑豊じん肺訴訟最高裁判所判決を知れば、国が本件原告との関係で、加害者であること(国賠法上の損害賠償責任を負うこと)を知ったことになるという国の消滅時効論は、判決の効力はその訴訟の当事者以外の者には及ばず、民事訴訟は紛争を当事者間において相対的に解決するものに過ぎない、という民事訴訟の基本原則に反する。
判決とその新聞報道等があったとしても,直ちに判決を知ったことにはならない。判決の内容は難解(要件:管理4以上もしくは合併症がなければならない、就労期間が昭和35年から61年までの間でなければならない、責任の内容は規制権限の不行使等難解なものである)。粉じんの状況や粉じん対策の内容・実施時期等は、各炭鉱ごとに異なるから、筑豊じん肺訴訟における「違法性」・「因果関係」・「要療養要件」等の判断が、そのまま本件訴訟に当てはまるわけではない。
国は、最高裁判決の「概要」を知ったときが「加害者を知った」ときとするが、概要とは何か、全く明らかにしていない。
争点②
仮に時効期間が経過しているとしても、国の時効の援用は「権利の濫用」として許されないのではないか。
・じん肺訴訟の歴史
国は長年(★注:先行訴訟の昭和61年提訴から、控訴審で和解した平成16年、一部原告については最高裁が上告不受理とした平成17年に至るまで)責任を認めず裁判で争っていた。
・被害の重篤性
※本件援用されている15名の被害の特質などは、別紙のとおり。 ★別紙は省略
・国は、平成16年4月の最高裁判決以降も、救済範囲に入るじん肺患者を把握していたにもかかわらず、何らの救済措置も取っていない。かかる国が時の経過だけで責任を免れることは許されるのか。
3 判決の意義
・今後請求を行おうとするじん肺患者の司法的救済の範囲に影響する。
・じん肺の問題のみならず、最高裁判決のある集団訴訟にも判決内容によっては問題が波及する可能性がある。
本日(3月26日)、注目すべき判決の言渡しがあります。
その1つは、言うまでもなく、宇都宮地方裁判所での、足利事件の再審公判での判決言渡し。無罪判決というのは確実ですが、問題は、同地裁が、菅家さんを無実の罪で無期懲役に処し(東京高裁、最高裁も支持)、しかも再審請求の第1審でDNA再鑑定を認めないまま棄却したことの誤判原因をどう総括し、菅家さんにどのように謝罪するかという点が注目されています。
もう1つは、私自身も原告弁護団に関わっている、新・北海道石炭じん肺訴訟の、札幌地裁での判決言渡し。これは、道外の方々にはあまり知られていないと思うので、少し長くなりますが、判決言渡しに先だって原告弁護団が司法記者クラブ向けに発表した解説文を引用してご紹介します。
これから提訴前のミニ集会に向かいます。判決が出たら改めてご報告いたします。 新・北海道石炭じん肺訴訟 平成22年3月26日判決に関する争点と判決の意義
2010年3月17日 新・北海道石炭じん肺弁護団
1 判決概要
[事件番号・事件名]
札幌地裁平成20年(ワ)第1119号、同第3802号
新・北海道石炭じん肺訴訟(第3陣第4次・5次訴訟)損害賠償事件
分離結審分(対象原告15名;別紙参照)
[判決日時]
平成22年3月26日 午前11時30分
2 判決に至る経緯と争点
(1)判決に至る経緯
新・北海道石炭じん肺3陣訴訟はじん肺患者ないしその遺族を原告とし、国に対してじん肺の発生またはその増悪を防止するための規制権限を行使することを怠ったことに基づき国家賠償法に基づき損害賠償を求めている訴訟であるところ、平成19年以降1次から5次まで、合計375名が国を被告として提訴してきた。
国は,第3陣訴訟について、先行した第1陣・第2陣訴と同様に,いわゆる筑豊じん肺最高裁判決にいう要件を満たす者については和解に応じてきていた。今後も基本的にはこのような対応を崩していない。
しかしながら、国は,別紙15名の原告については、不法行為の消滅時効期間(民法724条)である3年が経過しているとして、消滅時効を援用したことから、この点につき判決が下されることになったものである。★別紙は省略
(2)争点①
15名について、民法724条の時効期間が経過しているか。
・民法724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから三年間行使しないときは、時効によって消滅する。
・国の主張の概要
「損害を知ったとき」→ 管理区分決定・合併症決定・死亡など
「加害者を知ったとき」→ じん肺に関する国の責任を明らかにした筑豊じん肺最高裁判所判決が平成16年4月27日に出されているのであるから、この周知期間を経過した時点で加害者が国であることを知ったことになる。周知期間は1年を超えない。
⇒ 平成20年4月の4次提訴時点で、上記最高裁判決から約4年。惟以前に「損害を知った」すなわち最終の管理区分決定・合併症認定・死亡の事実があった原告については、「損害及び加害者を知った」ときから3年を経過しているから、消滅時効期間が経過している。
・国の主張の問題点(原告側の主張要旨)
民事訴訟は、紛争を、その訴訟の当事者間においてのみ、相対的に解決するものである。それゆえ、筑豊じん肺最高裁判所判決が国の責任を認めたからといって、その訴訟の当事者になっていなかったじん肺被害者について国の責任が認められたことにはならない。本件の原告が筑豊じん肺訴訟最高裁判所判決を知れば、国が本件原告との関係で、加害者であること(国賠法上の損害賠償責任を負うこと)を知ったことになるという国の消滅時効論は、判決の効力はその訴訟の当事者以外の者には及ばず、民事訴訟は紛争を当事者間において相対的に解決するものに過ぎない、という民事訴訟の基本原則に反する。
判決とその新聞報道等があったとしても,直ちに判決を知ったことにはならない。判決の内容は難解(要件:管理4以上もしくは合併症がなければならない、就労期間が昭和35年から61年までの間でなければならない、責任の内容は規制権限の不行使等難解なものである)。粉じんの状況や粉じん対策の内容・実施時期等は、各炭鉱ごとに異なるから、筑豊じん肺訴訟における「違法性」・「因果関係」・「要療養要件」等の判断が、そのまま本件訴訟に当てはまるわけではない。
国は、最高裁判決の「概要」を知ったときが「加害者を知った」ときとするが、概要とは何か、全く明らかにしていない。
争点②
仮に時効期間が経過しているとしても、国の時効の援用は「権利の濫用」として許されないのではないか。
・じん肺訴訟の歴史
国は長年(★注:先行訴訟の昭和61年提訴から、控訴審で和解した平成16年、一部原告については最高裁が上告不受理とした平成17年に至るまで)責任を認めず裁判で争っていた。
・被害の重篤性
※本件援用されている15名の被害の特質などは、別紙のとおり。 ★別紙は省略
・国は、平成16年4月の最高裁判決以降も、救済範囲に入るじん肺患者を把握していたにもかかわらず、何らの救済措置も取っていない。かかる国が時の経過だけで責任を免れることは許されるのか。
3 判決の意義
・今後請求を行おうとするじん肺患者の司法的救済の範囲に影響する。
・じん肺の問題のみならず、最高裁判決のある集団訴訟にも判決内容によっては問題が波及する可能性がある。