Q1.相続税はいくらかかる? いつまで申告?
3ヶ月前、母が死去しました。父は先に亡くなっており、夫婦の間に子供が3人います。遺産がどのくらいあると相続税はかかるのでしょうか。また、いつまでに申告しなければなりませんか。
A1
 相続財産(正味)の評価額が8,000万円以下のときは、相続税はかかりません。相続税の申告期限は、現在、相続開始日(亡くなった日)から10ヶ月以内とされています。
相続税のかかる価格=財産―〔借金+葬式代〕―*基礎控除
* 基礎控除は、5,000万円+1,000万円×法定相続人数と決められており、相続人3名のケースでは基礎控除は8,000万円となります。尚、土地などの不動産は路線価などに基づいて価格を計算しますので、時価(実際の取引価格)と一致しないことにご注意下さい。
 
Q2.遺産分割~土地からみ~
亡母の相続人は子供3人(いずれも男)です。めぼしい遺産としては、長男一家が住んでいる住宅しかありません。次男と三男は自分達にも権利があるからと強く主張しています。長男家族は長年母と同居してきたので、住宅を出たくありません。どう分けたらよいでしょうか。
A2
  子供3人の相続分は各3分の1です。長男が次男及び三男に対し、それぞれ、住宅の価格の3分の1に相当する金銭もしくは他の財産を渡すことにして、住宅を全部長男が相続することができます。代償分割といいます。
尚、所有権移転登記をするときに、遺産分割協議書を作成する方法と弟たちから相続分不存在証明書という書類を出してもらう方法があります。

Q3.遺産分割~金銭援助あり~
亡母の相続人は子供3人(いずれも女)で、遺産総額は5,000万円です。3人の子のうち長女だけ結婚時にお祝いとは別に500万円を援助してもらっています。財産はどう分けたらよいでしょうか。
A3
  長女の受けた500万円を「特別受益」として、相続財産に加えて計算し、3人の具体的相続分は次の通りとなります。
  長女(5,000万円+500万円)×1/3-500万円
=1,333万円
二女及び三女(5,000万円+500万円)×1/3
=1,833万円

Q4.借金も相続?
Aさんは商売に失敗してあちこちに借金を残したままこの世を去りました。Aさんの息子Bさんのところには早くも債権者が殺到し、督促してきています。Bさんはどうしたらよいでしょうか。
A4
  相続の事実を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対し相続放棄の申述を行えば、債権者から追及を受けることはなくなります。
  相続の事実がある以上、積極財産とともに消極財産である負債もまた相続人に承継されます。負債の方が資産より多いときは、実に酷な事態となります。そこで、法律は相続放棄の自由を認めている訳です。
  積極財産の限度で消極財産を承継し、弁済する限定承認という制度もありますが、限定承認をした相続人は財産管理、公告、債務弁済などかなり重い負担を負うことになります。

Q5.相続放棄しても生命保険金受け取れる?
Aさんは、先日夫に先立たれました。子供は二人います。夫の負債が多いので、相続放棄をしたいと思っています。ところが、夫は1,000万円の生命保険に入っており、受取人は「法定相続人」と記載されていました。相続放棄すると保険金はもらえないのでしょうか。
A5
  妻と子供が相続放棄しても、保険金を受け取ることができます。
法定相続分に応じて妻が500万円、子供は各250万円の保険金を受け取ることができます。
  保険契約者(兼被保険者)である夫が死亡保険金受取人を「法定相続人」指定した場合は、特別の事情がない限り、被保険者が死亡した時点での法定相続人たるべき者個人を受取人と指定したものと解釈されています。そして、保険金請求権は、夫の遺産ではなく、指定された相続人自身の固有の財産と解されています。但し、相続税法では保険金を相続財産とみなしており、相続税の課税対象となります。

Q6.遺言書が出てきた
Aさんが死亡した後になって、本人が作成した遺言書が2通出てきました。遺産を分けるにはどうしたらよいのでしょうか。
A6
  日付の後の遺言が優先し、日付の前の遺言で後の遺言と抵触する部分は撤回したものとみなされます。
  遺言者はいつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を取消(撤回)することができます。2通の遺言書のうち日付が後の遺言が有効であり、それに抵触した前の遺言は無効になります。
 尚、公正証書遺言以外は、家庭裁判所に遺言書を提出してその検認を経なければならず、これに違反したときは5万円以下の制裁があります。

Q7.相続~土地価格変動でいつの時価で計算?~
AとBの兄弟二人の父親が亡くなりました。母親は既に亡くなっています。ところが、遺産である土地・建物その他一切の財産をAに相続させるという父の遺言が出てきました。Bは自分にも最低限の権利があると主張し、裁判になりました。相続から3年経って、Aは不動産は渡せないが現金で支払うと申し出た。この間、土地の価格が大幅に変動したので、いつの時点での価格に基づいて金額を算出したらいいのでしょうか。
A7
  現実に支払(価額弁償)がなされるとき、訴訟の場合は事実審(第1審または第2審)の口頭弁論終結時における時価に基づいて算出されます。
  Bは、法定相続分2分の1の半分である4分1の遺留分を有します。遺留分は相続人が遺産のうち(遺言にかかわらず)これだけは自分のために残してもらえる部分のことです。
遺言はBの遺留分を侵害していますので、Bは遺留分減殺(げんさい)請求をしたのです。この裁判でBの請求が認められると、不動産についてBが4分の1の持分を有することとなるので、Aは共有持分の代わりに金銭を支払うと申し出たものです。
従って、金銭支払(価額弁償)時において目的物(共有持分)と等価でなければならない訳です。

Q8.遺産の中身の調査
  遺産に何があるか分からないのですが、どうしたらよいでしょうか。
A8
  預貯金は金融機関に照会することができます。弁護士に依頼して弁護士照会を利用してもよいでしょう。銀行で貸金庫の利用がなかったかも調べるとよいでしょう。有価証券は証券会社からの通知書、不動産などの固定資産は納税通知書から判明することもあります。

Q9.株式の評価
  遺産に含まれる株式の評価はどうしたら分かるのでしょうか。
A9
  ①上場株式は証券取引所で公表されている取引価格により、②非上場株式については、業種が類似する会社の上場株式取引価格を基準にして、資産内容、収益配当、の状況を考慮して決める方法や、会社の純資産額を発行済み株式数で除して一株あたりの評価額を決める方法があります。詳しくは税理士にお尋ね下さい。

Q10.内縁の妻と借家権
  内縁の夫が借りていた部屋に住んできましたが、彼が死去しました。私は出て行かなければならないのでしょうか。
A10
  出て行かなくてよいでしょう。内縁の夫に相続人がいないときは、内妻であるあなたが大家に反対の意思表示をしない限り、ご主人の権利義務を承継します。相続人がいる場合でも、裁判例では、内妻は、相続人が取得した借家権を援用し、大家に居住し続けることを主張できます。また、相続人からの明け渡し請求は、権利の濫用として退けられます。

Q11.葬式費用
  母が亡くなり、長男が喪主となって葬式を行いました。長男が支払った費用を遺産から出すことはできますか。
A11
  できます。葬式費用は喪主が負担すべきものですが、香典は葬式費用の一部をふたんすることを目的としていますので、まずこれで賄い、不足額については相続財産に関する費用として相続財産の中から支払われることになります。

Q12.次男には借金問題で迷惑をかけられっぱなしなので、財産を渡したくありません。できるでしょうか。
A12
  次男が納得して協力する気があれば、次男自身が遺留分放棄許可の審判を家庭裁判所に申し立てるという方法があります。後は、次男に財産を渡さない遺言書を書くことです。
もう一つは、家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求する方法です。被相続人に対する虐待または重大な侮辱、その他の著しい非行(廃除原因といいます)があると裁判所が認めると、次男の相続人資格が失われます。廃除原因は、虐待・侮辱・非行の程度、当事者の社会上の地位、家庭の状況、教育制度、被相続人側の責任の有無その他一切の事情を考慮して裁判所が決めます。金品の持ち出し、多額の借金をし、消費者金融の後始末をさせて行方不明になっているケースで廃除を認めた例があります。

Q13.相続人の所在不明
  共同相続人の一人である兄は、借金を抱えたまま数年前より音信不通になっています。遺産分割協議はどのようにしたらよいでしょうか。
A13
  家庭裁判所に兄の不在者財産管理人の選任を申立て、選任された管理人と遺産分割協議をすることができます。また、兄の生死が7年間以上明らかでないときは、同じく家庭裁判所に申し立てて、失踪宣告をしてもらうと、兄は死亡したものと扱われ、兄に相続人がいれば、その相続人と遺産分割協議をすることができます。

Q14.遠方の裁判所に調停を申し立てられた
  兄が東京家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。私は遠方に住んでいるので、出席できません。どうしたらよいでしょうか。
A14
  家事調停には本人が出頭するのが原則ですが、やむを得ない事情があるときは代理人を出頭させることができます。弁護士以外の者を代理人とするときは、家庭裁判所の許可が必要です。

Q15.遺言の作成
  私が死んだ後、子供達の間で争いが起きないよう遺言を書いておきたいのですが、どのように書いたらよいでしょうか。
A15
  普通方式の遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類がありますが、多く使われているのは秘密証書を除いた2種類です。自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、指名を自書し、押印するだけで作成でき、便利ですが、遺言者の死亡時に誰が保管し、きちんと相続人らに出してくれるのかという不安があります。また、遺言の有効性が争われることも多いです。この遺言の保管と有効性の争いの問題を避けるには、公証役場が遺言を保管してくれる公正証書遺言が優れています。公証役場で、遺言内容を公証人に口授し、2名以上の証人に確認してもらい、公証人に遺言書を作成、保管してもらいます。

Q16.検認
  母が亡くなり、部屋を整理したところ、「遺言」と書かれた封筒が出てきました。封をしてあるのですが、開けて中を見てもよいでしょうか。
A16
  勝手に開けてはいけません。5万円以下の過料の制裁があります。被相続人の住所地の家庭裁判所に提出して検認の手続を取らなければなりません。相続人などの立会の下で裁判所が開封し、検認調書を作ってくれます。検認を済ませたからといって、遺言が有効であると認めるものではありません。