2014年 9月の記事一覧

«Prev1Next»
14年09月28日 22時17分50秒
Posted by: makishima

「不利な情報は先に言って下さい」

私が日頃依頼者に対し思っている言葉です。

高いところからものを見ること(前回のブログ「裁判官みたいなこと言うな」ご参照)と同様に重要なのが、質問です。

質問は事実を把握する最も重要な武器といえます。

依頼者は、自分にとって不都合なことは、自分の弁護士にさえなかなか話してくれません。

もちろん、依頼者が自分に不都合なことを隠したい、言いたくても言えない、本人や周りの様々な事情により言いたくない気持ちも分かります。

しかし、事前に不利な情報をも収集してこそ、相手に、そして裁判に勝てるのです。

そこをうまく聞き出すのが弁護士の技量です。

ところが、これは「言うは易く、行うは難い」です。

依頼者に十分な質問ができないと、不利な事実を聞き出せないまま、依頼者から聞いた有利な情報のみが事件の全体だと思って裁判に臨んでしまうことになりかねません。

ところが、裁判には相手がある。相手も同様に、自分に有利な情報(つまりこちらには不利な情報)を収集しています。そして、相手から、こちらに不利な情報(証拠)を突如突きつけられる。こうなってしまうと、対策のとりようもありません。

一方、こちらに不利な情報が事前に分かっていれば、今後の展開や相手の出方を予想して、事前に手を打っておくことができます。

そのため、弁護士は依頼者に対し「不利な情報は先に言って下さい」と言いたいのです。

私は、このようにはっきりと言う時もありますが、「質問を繰り返す」ことにより、依頼者から有利な情報だけでなく不利な情報も聞き出すようにしています。

疑問が解消するまで、質問をねちっこく続けます。返事があっても、再度、形を変えて「なぜ」と聞き返す。それでも不十分なら、再度「なぜ」と聞き返す。それくらいしないと、良い答えを得ることができません。証人尋問も同じです。

信濃法律事務所

弁護士 臼井 義幸

















14年09月28日 21時23分26秒
Posted by: makishima

後遺障害は、通常、事故受傷から6カ月を経過した後に症状固定と診断された時点で申請します。

後遺障害等級は、自賠責保険会社を窓口にして、損害保険料率算出機構に属する自賠責損害調査センター調査事務所が認定しています。

よくあるケースとしては、頸椎捻挫(いわゆるムチウチ)につき後遺障害を申請する場合ですが、14級に該当という方もいれば、非該当という方もいます。

非該当の理由としては、

①「画像上、異常所見は認め難い」、②「神経学的所見は認められない」、③「症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」と記載されていることが多いです。

①については、頸椎の全体に、年齢変性所見が乏しく、経過のMRIで、C4/5C5/6C6/7のいずれかにヘルニア所見=椎間板突出が認められているかなどが判断材料とされています。

②については、「事故直後から、左右いずれかの上肢、肩から手指にかけて、だるさ感、重さ感、痺れなどの症状が認められたか」、「それが今も継続しているか」、「自覚症状に一致して、スパーリング、ジャクソン、神経根誘発テスト等で陽性反応を示しているか」などが判断材料とされています。

③については、通院日数・期間などが考慮されます。

画像上異常所見がなく、神経学的所見が認められない被害者でも14級が認定される方もいますが、受傷後の実通院日数は1カ月あたり15日以上(トータルの通院期間も1年以上)という方が多いようです。

信濃法律事務所
弁護士 臼井義幸





14年09月21日 14時18分02秒
Posted by: makishima

弁護士になりこの10月で8年が経ちます。

弁護士になりたての頃、ボス弁から「裁判官みたいなことを言うな」とよく小言を言われたのを覚えています。「裁判官みたい」というのは、ほめ言葉ではありません。闘う姿勢のない弁護士を叱責する常套句です。

弁護士は依頼者の代理人ですから、依頼者のために闘う姿勢がなければなりません。裁判官なら原告と被告双方の言い分を聞いて、第三者として判断すればすみます。

しかし、弁護士は、裁判官のように中立的に考え、高台から眺めるようでは駄目だ、というのです。

中立、公平な立場で交渉や裁判に臨んで、相手が強硬に攻めてきたらどうなるでしょうか。譲歩に譲歩を重ね、結局は依頼者に不利な妥協を強いられることになるでしょう。

よって、緒戦には強力に依頼者の立場を主張すべきです。

しかし、弁護士は、一方では依頼者を代理する立場にありながら、他方では、自己の主張を裁判官という第三者によって判断されてしまいます。あまりに一方的な主張をすれば、裁判官に簡単に否定されてしまいます。反面、あまりに中立的な主張をしては、依頼者の利益を最大限に守ることはできません。


こうして弁護士は、依頼者の立場を主張しなければならないという要請と、裁判官(第三者)に通用する主張をしなければならないという要請とのジレンマに立たされます。

このジレンマを解くため、私は「一応の合理性の認められる最大限の主張(金額)」を裁判官(相手)に提示することにしています。

「依頼者の代理人ではあるが、依頼者と一体化してはならない」

これもボス弁から言われた言葉ですが、裁判官(或いは相手)の視点から事実を見ることを意識しなければならないというのです。

ところが、これは「言うは易く、行うは難い」です。

弁護士になりたての頃を振り返ると、依頼者と一体化してしまい自己の主張をすることに気を取られ、相手の主張に反論できていない(自己の弱点をよく見ていない、相手の急所も押えていない)書面も少なくなかったと思います。

依頼者のために闘う姿勢を根本に持ちつつも、依頼者から一歩引いたところから、さらに言えば、裁判官のように高台から事件を見る目が重要なのです。

信濃法律事務所

弁護士 臼井 義幸







14年09月17日 22時15分11秒
Posted by: makishima

拝啓 さわやかな季節を迎え、皆様にはますますご清栄のことと存じます。

 さて私儀このたび今年の1月より執務しておりました信濃法律事務所を今月をもちまして退所いたします。

 信濃法律事務所在所中は、公私にわたり格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。

 今後は、郷里である新潟県長岡市での開業いたします。独立開業後は、これまで賜った臼井義幸弁護士及び他の先輩弁護士からのご教示を忘れることなく、全力で努力する所存でございます。今後とも一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

 まずは略儀ながら、書中をもってご挨拶申し上げます。

                                 敬具

                        平成26年9月吉日

                        弁護士 平石 優介


























 

 

14年09月16日 18時22分57秒
Posted by: makishima

「部下を使うことは、夏に火鉢を抱くようなものだ」

黒田孝高(黒田官兵衛)が息子の長政に語ったとされる言葉です。


黒田官兵衛は、戦国時代から安土桃山時代を生きた名将であり、部下を動かす才があったため、家臣団は強力だったと言われています。

官兵衛は27歳の時家督を相続し、姫路城主となります。最初は織田信長に仕え、のち豊臣秀吉の軍師として毛利氏との和解(中国大返し)などに軍功がありました。

秀吉は、その底知れぬ才を恐れ、かえって冷遇したとも伝えられています。


さて、冒頭の言葉ですが、下剋上の戦国時代ですから、大名といえども意のままに家臣を操縦できた訳ではありません。


「三十歳を超えてやっと実感することだが、武士を使うのにはコツがある。夏に火鉢を抱くかのような、日照りのときに傘をさすかのような、無駄とも思えるほどの堪忍を守らなければならない。そうしなくては家臣は自分に服してこないのだ。」(「武士道 サムライ精神の言葉」)


火鉢とは、大きな鉢に灰を入れ、中に炭火をいけて手足をあぶり、室内を暖め、湯茶などを沸かすのに用いた暖房具です。その火鉢を夏に抱くというのですから、大変な辛抱といえます。

官兵衛は、家臣に何か問題があったときも、まず昇格させたり金銀衣服を与えたりした上で、数日してから注意したと言われています。

そこまでしなくても・・・と思いますが、それほど戦国時代の人間関係は熾烈だったのでしょう。

夏に火鉢を抱くというのですから、まさに無駄と思えること、むしろ苦痛に感じることですが、いずれ役立つ時が来るから、夏であっても手放す訳にはいかない(部下とはそういうものである)、そのような意味で火鉢に例えたのでしょうか。


弁護士 臼井 義幸

«Prev1Next»