茂 美 :ねえ,弾くん。
      この食堂の食べ物を勝手に食べちゃったら,窃盗罪になるの?


 弾  :そうだね。


茂 美 :そうすると,刑事裁判を受けることになるのね。


 弾  :必ずしもそうであるとは限らないんだよ。
     食堂から被害届が出なかったら,そもそも警察すら動かないで終わってしまうこともありえる

     と思うよ。
     刑法に規定された犯罪行為をやっていることは間違いないんだけど,被害者が許している等

     の理由で,刑罰を科して罰するまでの違法性がないってことだろうね。


茂 美 :被害届が出たら?


 弾  :まずは警察の取り調べを受けることになるだろうね。

     さらに検察庁で取り調べを受けて,そこで,担当の検察官が,犯罪行為が行われたのは間

     違いないとの心証に至れば,その検察官が処分を決めるんだけど,大きく分けると,

     起訴猶予(不起訴),略式命令の申立て,公判請求(正式裁判)の3つの処分があるんだ。
     反省している,被害が小さい,常習性がない等の理由で,不起訴になる場合もあるんだよ。

     略式命令の申立てというのは,軽微な罰金刑の場合に,被疑者の同意を前提に,公開の法

     廷での正式裁判を経ないで裁判所が罰金の命令を出して終結する手続きだよ。

     その場合は,略式請書(りゃくしきうけしょ)というのを書くことになるんだ。
     他には,犯罪の種類や被害の大きさによっては,微罪処分といって,検察庁の取り調べを受

     けないで終わる処分もあるんだよ。
     犯罪を犯したからといっても,全ての件について公開の法廷で裁かれるわけではないのさ。


茂 美 :じゃあ,私が弾くんのおかずを食べてしまっても,被害届はでないから,処罰はされないって

     ことね♪


  弾 :あっ!!僕が最後に食べようと思ってとっておいたカニクリームコロッケが・・・。

     茂美ちゃん,ひどいよ~・・・。



(弁護士 横尾 和也)