法 子 :ホームレスの人たちが水際作戦に遭ったんだって!


律 子 :水際作戦って?
      「背水の陣」みたいに「後がない」って感じ?


すばる君:全然違うよ(戦国時代じゃないんだから・・・)。
      水際作戦っていうのは,生活保護の申請をしようとして役所の福祉事務所の窓口まで来た

      人に対して,福祉事務所が,
      「65歳までは稼動年齢なのでがんばって仕事を見つけなさい」
      「扶養義務者に援助してもらいなさい」
      「診断書を取ってきなさい」
      「持ち家などの資産(自動車なども)を処分しなさい」
      「所持金が無くなってから来なさい」
      「ホームレスなので生活保護は受けられない」
      「借金があると生活保護は受けられない」
      「家賃が高すぎるから生活保護は受けられない」
      「住民登録がないから保護は受けられない」
      「税金を払っていないから保護は受けられない」
      ・・・などと言って,申請ができないかのように伝えて,「相談扱い」にして申請を断念させる

      ことを言うんだ。     


法 子 :生活保護法4条1項には,「保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その

      他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ

      る」とあるから,福祉事務所の対応には,もっともだと感じるところがあるのだけど・・・。


すばる君:「保護の補足性の原理」と言われているヤツだね。

      確かに,これらの理由があれば,生活保護費の受給の要件を満たさないことがある

      かもしれないけど,必ずしもそうであるとは言えないんだよ。
      生活保護法7条の規定「保護は,・・・申請に基づいて開始する」の解釈からは,

      福祉事務所は「申請できるかどうか」を判断することは許されず,生活保護の申請がなされ

      た後に,必要な調査を行って要否判定を行うことになっているんだ。

      ちなみに,申請は口頭でも可能なんだよ。
      ある実務家は「申請だけならイチローでも出来る」と言ったそうだよ。
      さっき挙げたことは要否判定の上では考慮されるけど,申請できない理由にはならないか

      ら,水際作戦はそもそも違法な行為だと言えるのさ。


律 子 :水際作戦,恐るるに足らず!ということね。
      すばる君も,毅然とした態度で申請するのよ!


すばる君:僕は生活に困窮してないんだけど・・・。 



                                      (弁護士 横尾 和也)