今年の5月21日、裁判員法(正式名称は「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」)によって裁判員裁判が始まってから、はや半年以上が経過しました。
 裁判員ネットのHPによれば、11月20日までに全国で71件の裁判員裁判が実施されたそうです。
 ※ちなみに、同HPには、全国の裁判員裁判・最新カレンダーや、「みんなの傍聴マニュアル」、「法廷記入シート」という傍聴用アイテムが掲載されており、地元の裁判所で裁判員裁判を傍聴してみたいという方にはお役立ちのサイトと思われます。
 私の地元・札幌地方裁判所でも、既に3件の裁判員裁判が行われており、の札幌高等検察庁HPに掲載されている「裁判員裁判事件の公判予定」によれば、来年1~2月には既に4件の公判(性犯罪は除く)が予定されているようです。

 司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日付)において「国民的基盤の確立(国民の司法参加)」として導入がうたわれ、その後わずか数年の間に制度設計された「裁判員制度」、実際に始まるまでは、日本人の国民性に合わないだとか、6対3では職業裁判官の言いなりになりかねないとか、様々な批判がありましたが、今のところ順調なスタートを切っていると言えるのではないでしょうか。

 とはいえ、本格的な否認事件(再審開始となった足利事件や布川事件のように、真犯人は別にいるとして被告人がえん罪を訴える事件)の審理は全国どこでも行われていないようであり、この種の事件の裁判員裁判が何件か終わって、上級審を含めて結果が出ない限り、真の意味での検証はできないでしょう。

 お隣の韓国では、わが国より一足早い昨年から、刑事裁判への国民参加としての「国民参与裁判」(わが国の裁判員制度よりも陪審制度に近い)が開始されていますが、かの国では、被告人に選択権があるほか(職業裁判官のみによる裁判を選択することも可)、組織犯罪や性犯罪などでは、たとえ被告人が国民参与裁判を選択しても、裁判所が「排除決定」をすることもままあるため、実際に国民参与裁判の公判が開かれた件数は、日本裁判官ネットワークのブログによれば、昨年1年間でわずか60件とか。
 私の見るところ、わが裁判員制度より優れた制度かと思っていたのですが、なかなか難しいものですね。

 ※ちなみに、この春に韓国へ事務所旅行に行った際、私は同僚の平澤弁護士とともに、仁川(インチョン)の地方法院(地方裁判所)で、殺人未遂事件の公判を傍聴しました。その時の傍聴記が、札幌弁護士会のHP中の弁護士コラム「隔週一言」に掲載されているので、ご笑覧ください。
 http://satsuben.or.jp/column/2009/05/post_40.html
 http://satsuben.or.jp/column/2009/06/post_43.html

 かくいう私も、実は、つい昨日まで被疑者国選弁護制度で「強盗致傷」(法定刑は懲役6年~無期懲役)の被疑者(容疑者)を担当しており、起訴後は裁判員裁判の対象事件になるものと覚悟していましたが、諸般の事情で「恐喝」+「傷害」という罪名で起訴されることになり、裁判員制度の対象事件ではなくなってしまいました。
(あまり詳しいことは書けませんが、正直なところ、ほっと一息・・・)