2009年 5月の記事一覧

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09年05月18日 23時30分11秒
Posted by: subarulaw
(会話形式でお楽しみください)



鐘尾可士多「いや~、先生。こないだの貸した金を返せと兼加理太を訴えた裁判、

        勝たせて頂いてありがとうございました。」



弁護士N「いやいや、請求認容を出したのは裁判所ですから。

      私は鐘尾さんからの依頼に対して誠実に仕事をしたまでです。」



鐘尾「いやいや、先生の努力あってこそですよ。

   なにしろ、1億円を回収できたんですからね。これは大きいですよ。」



弁護士N「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。

      確かに勝訴判決を取ることができましたが、

      まだ回収できるって決まったわけじゃないんですよ。」



鐘尾「なんでですのん。なら勝った意味ないですやん(-.-;)」



弁護士N「もちろん、請求認容判決を得たことで、兼加さんが自主的に1億円払うことも考えられます。

      でも、もしかしたら兼加さんが判決を無視しして払わないかもしれないですよね?」



鐘尾「まぁ、確かに1億円素直に払えるんなら、こんなことにはなってませんわなぁ。」



弁護士N「うん。

     もし、そんな時にお金を貸した人なら、

     いつでもお金を借りた人の土地を売れるってルールだったらどうでしょう?」



鐘尾「金を貸した側にはありがたい話だが、わしも金を借りることがあるしなぁ。

   そんなんされたら怖くてたまらんわ。」



弁護士N「ですよね。

      だから、判決をもらって、兼加さんの財産を1億円分差押えてもいいですよ、

      とお墨付きをもらう必要があるんですね。ここに裁判をする意味があるんですよ。

      そして、そのお墨付きをもとに、今度は執行手続というのをするのです。」



鐘尾「はぁ・・・・勝訴判決だけではだめなんでんなぁ。回収までの道のりも遠そうや。」



弁護士N「お金を貸すときに公正証書を作っておくと、

      裁判しなくても執行手続に入れたりしますから覚えておいてくださいね。

      ちなみに、大阪の場合は、新大阪駅から車で5分くらいのところに執行センターがあり、

      そこで執行の手続きをします」



鐘尾「新大阪の裁判所といえば、交通違反をしたときの罰金を払うところちゃいますのん?」



弁護士N「そうです。よう知ってますねぇ。」



鐘尾「・・・・・・・・・・・・・・・」



弁護士N「…ま、気を取り直して、と。

      とりあえず請求認容判決をもらったら、

      執行手続をとって相手方の財産を差し押さえてお金に換えて、

      それで回収するんですよ」



鐘尾「はぁ、手間がかかりまんなぁ。

    でも1億が回収できないのは困りますし、まぁ、先生ひとつ頼みますわ。

    報酬は1億円が回収できたらでよろしいでっしゃろ。」



弁護士N「いやいや。判決取るのと執行手続は別物ですから、

      勝訴判決取った分の報酬は払ってくださいよ(汗」



(弁護士 西塚直之)
09年05月16日 19時25分07秒
Posted by: subarulaw
茂 美 :さっきの裁判,弁護人と検察官が「異議あり」を連発してて,まるでニンテンドーDSの

     ゲームの「逆転裁判」みたいで,見ごたえがあったわね。


 弾  :あのゲームでは,証人が矛盾していることを言ったときに,証拠を突きつけて「異議あり」

     って言うんだけど,実際の裁判での「証人尋問(証拠調べ)に関する異議」の理由は尋問

     自体に対してのもので,だいぶ違うんだよ。


茂 美 :異議の理由には,どんなものがあるの?


 弾  :異議の対象になる尋問をざっと挙げると,
      立証事項・関連事項以外のことについての尋問(「関連性なし」)
      答えて欲しい内容を質問の中に暗示させる尋問(「誘導」)
      誘導の一種だけど証言に不当な影響を及ぼす尋問(「誤導」「前提誤認」「要訳不相当」)
      反対尋問する必要のない事項についての尋問(「主尋問の範囲外」)
      個別的・具体的でなく答えにくい尋問(「抽象的・包括的」)
      証人を威嚇・侮辱する尋問(「威嚇的」「侮辱的」)
      すでに聞いたことについてむしかえす尋問(「重複」)
      証人に意見を求め,議論にわたる尋問(「意見・議論」)
      証人が直接経験しなかった事項についての尋問(「伝聞」「推定」「仮定」)
     というのがあるよ。
     「誘導」は,反対尋問なら必要があるときは許されるし,主尋問でも,証人の身分などの

     準備的な事項,争いのないことが明らかな事項,証人の記憶を喚起するために必要な

     事項などについては許されているんだよ。
     「重複」以降に挙げた5つについても,重要な事項についての尋問など,正当な理由が

     あれば許されるんだ。


茂 美 :「異議」って,奥が深いのね。
      主尋問と反対尋問はどう区別するの?


 弾  :証人を申請した側がするのが主尋問だよ。
     反対尋問では,主尋問で出た証言の矛盾点などを突いていくことになるんだ。


茂 美 :ところで,今日の夕食は,もちろん弾君が奢ってくれるのよね?


  弾 :異議あり!!誘導尋問です。


茂 美 :争いのないことが明らかな事項なので,異議は認められません。
     異議棄却します。弾君は質問に答えて下さい♪


  弾 :僕が断れないことを知ってて聞いてるでしょ・・・。



(弁護士 横尾 和也)
09年05月01日 14時13分40秒
Posted by: subarulaw
法 子 :ホームレスの人たちが水際作戦に遭ったんだって!


律 子 :水際作戦って?
      「背水の陣」みたいに「後がない」って感じ?


すばる君:全然違うよ(戦国時代じゃないんだから・・・)。
      水際作戦っていうのは,生活保護の申請をしようとして役所の福祉事務所の窓口まで来た

      人に対して,福祉事務所が,
      「65歳までは稼動年齢なのでがんばって仕事を見つけなさい」
      「扶養義務者に援助してもらいなさい」
      「診断書を取ってきなさい」
      「持ち家などの資産(自動車なども)を処分しなさい」
      「所持金が無くなってから来なさい」
      「ホームレスなので生活保護は受けられない」
      「借金があると生活保護は受けられない」
      「家賃が高すぎるから生活保護は受けられない」
      「住民登録がないから保護は受けられない」
      「税金を払っていないから保護は受けられない」
      ・・・などと言って,申請ができないかのように伝えて,「相談扱い」にして申請を断念させる

      ことを言うんだ。     


法 子 :生活保護法4条1項には,「保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その

      他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ

      る」とあるから,福祉事務所の対応には,もっともだと感じるところがあるのだけど・・・。


すばる君:「保護の補足性の原理」と言われているヤツだね。

      確かに,これらの理由があれば,生活保護費の受給の要件を満たさないことがある

      かもしれないけど,必ずしもそうであるとは言えないんだよ。
      生活保護法7条の規定「保護は,・・・申請に基づいて開始する」の解釈からは,

      福祉事務所は「申請できるかどうか」を判断することは許されず,生活保護の申請がなされ

      た後に,必要な調査を行って要否判定を行うことになっているんだ。

      ちなみに,申請は口頭でも可能なんだよ。
      ある実務家は「申請だけならイチローでも出来る」と言ったそうだよ。
      さっき挙げたことは要否判定の上では考慮されるけど,申請できない理由にはならないか

      ら,水際作戦はそもそも違法な行為だと言えるのさ。


律 子 :水際作戦,恐るるに足らず!ということね。
      すばる君も,毅然とした態度で申請するのよ!


すばる君:僕は生活に困窮してないんだけど・・・。 



                                      (弁護士 横尾 和也)
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