茂 美 :さっきの裁判,弁護人と検察官が「異議あり」を連発してて,まるでニンテンドーDSの

     ゲームの「逆転裁判」みたいで,見ごたえがあったわね。


 弾  :あのゲームでは,証人が矛盾していることを言ったときに,証拠を突きつけて「異議あり」

     って言うんだけど,実際の裁判での「証人尋問(証拠調べ)に関する異議」の理由は尋問

     自体に対してのもので,だいぶ違うんだよ。


茂 美 :異議の理由には,どんなものがあるの?


 弾  :異議の対象になる尋問をざっと挙げると,
      立証事項・関連事項以外のことについての尋問(「関連性なし」)
      答えて欲しい内容を質問の中に暗示させる尋問(「誘導」)
      誘導の一種だけど証言に不当な影響を及ぼす尋問(「誤導」「前提誤認」「要訳不相当」)
      反対尋問する必要のない事項についての尋問(「主尋問の範囲外」)
      個別的・具体的でなく答えにくい尋問(「抽象的・包括的」)
      証人を威嚇・侮辱する尋問(「威嚇的」「侮辱的」)
      すでに聞いたことについてむしかえす尋問(「重複」)
      証人に意見を求め,議論にわたる尋問(「意見・議論」)
      証人が直接経験しなかった事項についての尋問(「伝聞」「推定」「仮定」)
     というのがあるよ。
     「誘導」は,反対尋問なら必要があるときは許されるし,主尋問でも,証人の身分などの

     準備的な事項,争いのないことが明らかな事項,証人の記憶を喚起するために必要な

     事項などについては許されているんだよ。
     「重複」以降に挙げた5つについても,重要な事項についての尋問など,正当な理由が

     あれば許されるんだ。


茂 美 :「異議」って,奥が深いのね。
      主尋問と反対尋問はどう区別するの?


 弾  :証人を申請した側がするのが主尋問だよ。
     反対尋問では,主尋問で出た証言の矛盾点などを突いていくことになるんだ。


茂 美 :ところで,今日の夕食は,もちろん弾君が奢ってくれるのよね?


  弾 :異議あり!!誘導尋問です。


茂 美 :争いのないことが明らかな事項なので,異議は認められません。
     異議棄却します。弾君は質問に答えて下さい♪


  弾 :僕が断れないことを知ってて聞いてるでしょ・・・。



(弁護士 横尾 和也)