1 特別受益

 遺言書がないと必ず、法定相続分通りに相続する権利があるのかというとそうではありません。例えば、長男、次男、長女がいて亡父の遺産が6000万円あったとします。その中で長男は、父の生前に3000万円を受け取っているとします。簡単に言うとこうした生前贈与を特別受益と呼びますが、こうした特別受益を受けている相続人がいれば、その相続人はいったん3000万円を返したこととして遺産総額を9000万円と考えます。これを「持ち戻し」といいます。

こうして生前贈与をプラスした遺産総額を相続人数の3で割ると1人3000万円ずつになります。しかし、長男は既に3000万円を受け取っているので、具体的な相続分は0。よって、次男と長女が3000万円ずつを相続するということになります。

2 持ち戻しの免除

 もっとも、遺言等で持ち戻し免除の意思表示をしておけば、特別受益を持ち戻す必要がなくなり、特別受益を受けた相続人はその分、他の相続人より、相続分が多くなるということになります。

3 寄与分

 また、相続分の修正要素には、寄与分というものもあります。例えば、被相続人の療養看護に努めた相続人は相続分の10%を寄与分として先に受け取ることができるといったものです。